YAMAHA GT-2000 Part3 (DDモータについてのアレコレ)
2007年8月10日元モータの設計者の立場からダイレクトドライブモータについて少し書き残しておこうと思います。
ダイレクトドライブモータについての批判の中で時々耳にするのが、コレ。
ターンテーブルを外した状態ではモータがカクカクと回転する。
こんなトルクムラ、回転ムラの多いモータをターンテーブルのイナーシャでごまかして回しているんだからいい音がするわけない。
これは完全に誤解です。
モータのサーボ系の設計はターンテーブルのイナーシャを考慮した上で行っているので、ターンテーブルを外した状態ではサーボ系が不安定になり、いわば発振状態になっているんです。
トルクムラでカクカク回るわけではないので、その状態を見て批判するのは間違ってます。
ターンテーブル無しの状態でもサーボ系のゲインを下げればスムースに回るようになりますが、逆にそのような設計をすると、ターンテーブルをつけたときに最高の性能が得られない。
つまり、軸受けなどの負荷ムラをサーボ系の力を借りて十分に押さえ込むことができなくなるので、ターンテーブル付きの適切なゲイン値のときよりもワウフラッタが悪化してしまうのです。
というわけで、ダイレクトドライブだからといってトルクムラがそんなに大きいわけではありませんので、現在お使いの方はこれについて悲観的に考えることはありません。
ターンテーブルのイナーシャは一般的には大きいほうが音にとってよいとされていますが、それについては全くそのとおりだと思います。
ただ、メーカ製のプレーヤのターンテーブルをにさらに重いものに換えてよくなるかどうかは??
イナーシャのさらに大きなターンテーブルを使用する場合にはサーボ系のゲインをそれに合わせて調整するのが理想です。
その場合には、明らかにイナーシャの小さな場合に比べて有利ですが、サーボゲインがそのままの場合にはサーボ系のカットオフ周波数が低くなるので、ターンテーブルのバランスが悪い場合にはかえって悪影響がでる可能性がありますので要注意。
それとクォーツロックのようなPLL回路を持つものの中にはイナーシャの増加によってサーボ系が不安定な方向になってしまうものがあることは知っておいた方がいいでしょう。
初期性能的には上記のとおりですが、重いターンテーブルは軸受けにとっては負担が増えるわけなので、当然ながら軸受けの寿命についての配慮が必要になります。
メーカが初めから重いターンテーブルを装着している場合には、それを配慮した軸受け設計がされているはずですが、ユーザが後から重いターンテーブルマットやスタビライザーを追加した場合には軸受け寿命への影響が無視できない可能性がありますので、それなりの覚悟は必要です。
ところで、現行製品からダイレクトドライブがほとんど消えている(松下電器だけが普及クラスのDJ用のプレーヤを作り続けていますが…)のはさみしいところ。
ダイレクトドライブ用のモータの生産には非常にコストがかかるので、少量生産ではとても採算が合わないということでしょう。
松下電器が作り続けられるのは金型や専用ICなどの過去の遺産をうまく活用しているからだと思います。
ベルトドライブとダイレクトドライブのどちらが音がいいのかというのはよく議論になりますが、現代の高級ベルトドライブと往年のダイレクトドライブの名器を聞き比べたわけではないので、僕にはコメントできません。
ただ、ダイレクトドライブはそれ以前のベルトドライブのワウフラッタが多い、モータが高速回転するのでその振動音(ゴロ)が多い、ピッチが正確でない、ベルトの交換などのメンテナンスが必要などの問題を解決するために生まれた経緯があるので、そんなにボロクソにいわれるほど悪くはないと思うのですが…
現代の高級ベルトドライブは過去の問題についての改善が進んでいると思いますが、機種によって使用しているモータの種類が違いますし、構造もさまざまなのでひとからげに議論することは難しいでしょう。
でも、ワウフラッタに関して言えば、ダイレクトドライブ並みに低くすることは困難なのではないかと思います。
最近の機種はワウフラッタのスペックをカタログなどに発表しなくなっているようなので、実情はわかりませんが…
音のよさはワウフラッタだけでは決まらないというのも確かにそうかもしれませんが、せめてワウフラッタ値くらいは公表して欲しいものです。
自信があればどうどうと公表できると思うんですけれど…
そういえば最近のハイエンドの製品はアンプでもスピーカでも周波数特性や歪率の生データがカタログなどに公表されているのはまれなようですね。
うがった見方をすれば、スペック上はハイエンドのものと普及品、中級品とで物理特性には差が現れないから…?
もっとオープンにしてもいいように思いますが、物理特性はイメージで売るハイエンド商品には似合わないのでしょうか?
今、どのくらいのダイレクトドライブのターンテーブルが生き残っているかはわかりませんがオーナーから愛されこれからも長生きして欲しいと思っています。
既にメーカから修理サービスを受けることはほとんど不可能だと思いますが低回転で消耗する部分は少ないので、使い方を間違えなければかなり永く使えると思います。
そうはいってももう生産中止になってから相当の年月が経っていますからこれからはサバイバルレース。
完動品はどんどん貴重品になっていくかもしれません。
次回はDDモータのメンテナンスについて書いてみようと思います。
ダイレクトドライブモータについての批判の中で時々耳にするのが、コレ。
ターンテーブルを外した状態ではモータがカクカクと回転する。
こんなトルクムラ、回転ムラの多いモータをターンテーブルのイナーシャでごまかして回しているんだからいい音がするわけない。
これは完全に誤解です。
モータのサーボ系の設計はターンテーブルのイナーシャを考慮した上で行っているので、ターンテーブルを外した状態ではサーボ系が不安定になり、いわば発振状態になっているんです。
トルクムラでカクカク回るわけではないので、その状態を見て批判するのは間違ってます。
ターンテーブル無しの状態でもサーボ系のゲインを下げればスムースに回るようになりますが、逆にそのような設計をすると、ターンテーブルをつけたときに最高の性能が得られない。
つまり、軸受けなどの負荷ムラをサーボ系の力を借りて十分に押さえ込むことができなくなるので、ターンテーブル付きの適切なゲイン値のときよりもワウフラッタが悪化してしまうのです。
というわけで、ダイレクトドライブだからといってトルクムラがそんなに大きいわけではありませんので、現在お使いの方はこれについて悲観的に考えることはありません。
ターンテーブルのイナーシャは一般的には大きいほうが音にとってよいとされていますが、それについては全くそのとおりだと思います。
ただ、メーカ製のプレーヤのターンテーブルをにさらに重いものに換えてよくなるかどうかは??
イナーシャのさらに大きなターンテーブルを使用する場合にはサーボ系のゲインをそれに合わせて調整するのが理想です。
その場合には、明らかにイナーシャの小さな場合に比べて有利ですが、サーボゲインがそのままの場合にはサーボ系のカットオフ周波数が低くなるので、ターンテーブルのバランスが悪い場合にはかえって悪影響がでる可能性がありますので要注意。
それとクォーツロックのようなPLL回路を持つものの中にはイナーシャの増加によってサーボ系が不安定な方向になってしまうものがあることは知っておいた方がいいでしょう。
初期性能的には上記のとおりですが、重いターンテーブルは軸受けにとっては負担が増えるわけなので、当然ながら軸受けの寿命についての配慮が必要になります。
メーカが初めから重いターンテーブルを装着している場合には、それを配慮した軸受け設計がされているはずですが、ユーザが後から重いターンテーブルマットやスタビライザーを追加した場合には軸受け寿命への影響が無視できない可能性がありますので、それなりの覚悟は必要です。
ところで、現行製品からダイレクトドライブがほとんど消えている(松下電器だけが普及クラスのDJ用のプレーヤを作り続けていますが…)のはさみしいところ。
ダイレクトドライブ用のモータの生産には非常にコストがかかるので、少量生産ではとても採算が合わないということでしょう。
松下電器が作り続けられるのは金型や専用ICなどの過去の遺産をうまく活用しているからだと思います。
ベルトドライブとダイレクトドライブのどちらが音がいいのかというのはよく議論になりますが、現代の高級ベルトドライブと往年のダイレクトドライブの名器を聞き比べたわけではないので、僕にはコメントできません。
ただ、ダイレクトドライブはそれ以前のベルトドライブのワウフラッタが多い、モータが高速回転するのでその振動音(ゴロ)が多い、ピッチが正確でない、ベルトの交換などのメンテナンスが必要などの問題を解決するために生まれた経緯があるので、そんなにボロクソにいわれるほど悪くはないと思うのですが…
現代の高級ベルトドライブは過去の問題についての改善が進んでいると思いますが、機種によって使用しているモータの種類が違いますし、構造もさまざまなのでひとからげに議論することは難しいでしょう。
でも、ワウフラッタに関して言えば、ダイレクトドライブ並みに低くすることは困難なのではないかと思います。
最近の機種はワウフラッタのスペックをカタログなどに発表しなくなっているようなので、実情はわかりませんが…
音のよさはワウフラッタだけでは決まらないというのも確かにそうかもしれませんが、せめてワウフラッタ値くらいは公表して欲しいものです。
自信があればどうどうと公表できると思うんですけれど…
そういえば最近のハイエンドの製品はアンプでもスピーカでも周波数特性や歪率の生データがカタログなどに公表されているのはまれなようですね。
うがった見方をすれば、スペック上はハイエンドのものと普及品、中級品とで物理特性には差が現れないから…?
もっとオープンにしてもいいように思いますが、物理特性はイメージで売るハイエンド商品には似合わないのでしょうか?
今、どのくらいのダイレクトドライブのターンテーブルが生き残っているかはわかりませんがオーナーから愛されこれからも長生きして欲しいと思っています。
既にメーカから修理サービスを受けることはほとんど不可能だと思いますが低回転で消耗する部分は少ないので、使い方を間違えなければかなり永く使えると思います。
そうはいってももう生産中止になってから相当の年月が経っていますからこれからはサバイバルレース。
完動品はどんどん貴重品になっていくかもしれません。
次回はDDモータのメンテナンスについて書いてみようと思います。
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