Project "M" - Mont-Blanc Ascent Day 2-1
Project "M" - Mont-Blanc Ascent Day 2-1
Project "M" - Mont-Blanc Ascent Day 2-1
6月25日(金)、実際にはまだ24日の11時15分に起きだして出発準備。

幸い腹が苦しいのは収まっている。これなら何とか歩けそうだ。
化繊の速乾性のシャツの上にフリース、ゴアテックスを身に着ける。
ゲーター、クランポン、ハーネス。ヘルメットにヘッドランプを付けている。
アイスアックスを持つ。
ほとんどのものを身に着けているので、バックパックの重みはあまり感じない。

ロープで結ばれ、12時前に3人でゆっくり歩き始める。マーク、カミさん、僕の順番。
パスカルとジャン・ポールのグループもすぐに続いて出発したようだ。
若い人たちのグループはペースが速いので後からの出発になるようだ。
気温は低いが、風はほとんどない。

マークのペースは相変わらずゆっくり。
あせらなくていいからと言ってくれる。
下にシャモニーの街の灯が見える。一番遠くに見えるのはジュネーヴの街の灯だとマークが教えてくれた。

しばらく歩くと右下がりの急な雪渓のトラバースになる。
暗くてわかりにくいが、トラバース道に沿って右上にワイヤーロープが張られているらしい。
マークは特に何も言わずたんたんと雪渓を渡る。
これが有名な落石名所のクーロアールかと思ったのだが…
あとで休憩のところで聞いたらやはりここがそうだったみたい。
まだ、気温が低い時期のしかも夜で雪が緩む可能性が少ないので落石の危険がほとんどないと判断したのだろう。

この後、岩登りが始まる。
これが延々と続く。
アイス・アックスは一時的にバックパックの背中のショルダー・ストラップの間に挿すよう言われるが一人ではなかなかできない。
マークが手伝ってくれる。
僕のバックパックは背中のパッドと背中の間の隙間がほとんどないのですわりが悪く、時々背中に当たって違和感がある。
さらに背をかがめるとアイス・アックスが落ちそうになるので気になってしょうがない。

途中、カミさんが足を滑らせて雪の斜面に宙吊りになる。
何とか右足を雪面に蹴りこんで起き上がる。
怪我がなかったのでほっとした。
マークが落ち着くようにということでチューブ入りのエナジー・ペーストを食べさせてくれたようだ。
後でカミさんに聞いたら頭を岩にぶつけたがヘルメットのおかげで事なきを得たとのこと。
幸運だった。マークの確保がなかったらと思うとぞっとする。
夜の岩登りは視界がヘッドランプの照らす範囲に限られるためやっかいだ。
満月に近い月が出ているので助けにはなっていると思うが十分ではない。
何箇所か鉄製の十字架の碑が建てられているのを見たが、どうもその場所で亡くなった登山者のためのものらしい。
そんなになってはたまらない。気を引き締めて進む。

やっとグーテ小屋(Gouter refuge)3817m に着いて小休止。
午前3時を過ぎていたと思う。
水補給し、アーモンドチョコボールを口に入れ、トイレも。
ここでヘルメットをはずす。
いつのまにかパスカルとジャン・ポールが先に着いていて先に出発する。

狭い雪のゲートを潜り抜け雪原へ。
あまり広くはないテント場を抜けてだらだら登る。
すでに標高3800mを越えているので僕らにとっては未体験ゾーンに突入している。
マークが深呼吸するようにアドバイスしてくれるが、呼吸は苦しくないし頭も痛くない。
今のところ高山病の症状はない。
ただ、頭がボーっとして考えがまとまらない。
脳が酸素不足なのか??
ひたすら機械的に足を交互に出すだけ。

ドーム・デ・グーテ(Dome de Gouter) 4304m の手前あたりで(たぶん)朝日があたりはじめる。
上から男性と女性の登山者が下りてくる。
マークは男性とは知り合いみたいで何か言葉を交わす。男性がガイドで女性が客なのか。
てっきり、頂上まで行って帰ってきたのかと思って、Congratulationsと声をかけてしまったがどうもそうではなく、女性が寒さのため登頂を断念したらしい。
悪いことをしてしまった。
僕がカメラを出して撮っていたら、男性が申し出てが僕ら3人の写真を撮ってくれた。
感謝。

確かに冷えてきた。手先と足先がしびれて感覚がなくなりかけている。
風がほとんどないのにもかかわらずこの寒さは想像を超えている。
手を握ったり緩めたりして動かすようにする。足先も指は動くので何とか動かしてみる。
無人の避難小屋、ヴァロ小屋(Vallot refuge)4362m 付近で小休止。一度脱いだフリースとさらにインナー・ダウンを着た。
とにかく寒かった。登りでインナー・ダウンを着るとは思わなかった。持ってきてよかった。マークも上にダウンジャケットを着込む。
ヴァロ小屋前後で他のいくつかの若いチームに抜かれた。
たぶん僕らよりは1時間かそれ以上遅くテート・ルース小屋を出発したのだと思う。

ヴァロ小屋から頂上までが長く感じた。
心肺への負荷がかなり上ってきた。
でも、息は苦しくはなかったのでこのまま足を動かしていれば頂上に行けると確信した。
まだ頂上でもないのにうれしくて涙が出そうになった。
やがて傾斜が緩んでやっと頂上。
他のチームのみんなが祝福してくれる。
マークやみんなと抱き合う。
カミさんがみんなにヒゲ面を押し付けられて痛がっていた。

写真は最初がモンブラン稜線上で見る朝日。
2枚目は朝日の中、マークと3人で。
3枚目はモンブラン頂上で。

コメント